最高裁判所第三小法廷 昭和27年(あ)3776号 判決 1953年12月22日
主文
本件各上告を棄却する。
理由
各弁護人の各上告趣旨は末尾添附別紙記載のとおりである。
弁護人高田利広の論旨中には判例違反、憲法違反を主張するものもあるけれども、原審は被告人等の行為は被告人等がその社会上の地位に基き継続的に従事する事務であって人の生命身体に対する危険を伴うもので、しかも適法の業務であると判断したものであることは判文上明らかであるから、所論判例違反論及び憲法違反論はいずれも前提を欠くものである。弁護人笠島永之助の論旨中にも判例を挙げて居るけれども原判決が該判例に相反する処は何も無いので問題にならない。その他の論旨はいずれも刑訴法四〇五条所定の上告理由に該当しないし、同法四一一条を適用すべき理由もない。((一)被告人三浦は厚生技官であるけれども薬剤師としての技官である。薬剤師が製剤した場合、薬事法所定の標示を為すべき義務あること勿論である。これは病院の使用人として為す場合でも変りはない。所論薬剤科業務分担表によるも右義務を免るべき理由を見出し得ない。(二)国立病院の製剤については薬事法の適用がないと解すべき理由はない。(三)看護婦が医師の指示に従って静脈注射をするに際し過失によって人を死傷に致した場合には刑法二一一条の責を負わなければならない。その他被告人等の過失並相当因果関係に関する原審の判断は正当である。)
よって同四〇八条により主文のとおり判決する。
この判決は、裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)